児童虐待相談件数が10万件を突破

時事問題子供, 家庭, 家族, 虐待

4日、厚生労働省が、平成27年度(2015年)の「児童相談所での児童虐待相談対応件数」の速報値を発表しました。それによると、昨年(8万8931件)と比較して16%の増加、10万3260件となり過去最高(最悪)を更新しました。
 
2016-08-04
厚生労働省報道発表資料「平成27年度 児童相談所での児童虐待相談対応件数<速報値>」(2016年8月4日)より筆者作成
 
 
相談対応件数が大幅に増加した自治体に聞き取ったところによると、主な増加要因は、

1.心理的虐待が増加した。
2.(心理的虐待が増加した要因は)面前DV(児童が同居する家庭での配偶者への暴力)について警察からの通告が増加した。
3.児童相談所全国共通ダイヤルの3桁(189)化の広報、マスコミによる事件報道などで国民や関係機関の児童虐待に対する意識が高まり、通告の増加につながった

の三点だとされています。

虐待の種類別の件数の推移を、以下にグラフにしてみました。これを見ると、心理的虐待が増えているのは事実ですが、ネグレクトや身体的虐待も前年と比べて増えています。
 
2016-08-04 (1)
厚生労働省報道発表資料「平成27年度 児童相談所での児童虐待相談対応件数<速報値>」(2016年8月4日)より筆者作成

グラフを見るとはっきりしているように、児童虐待の相談件数は、急速に右肩上がりで増えています。ここには、厚労省も指摘している通り、社会全体の意識の高まりによって、水面下に潜んでいた虐待事案が表面化したことも寄与しているでしょう。ただ、いずれにせよ、子供が年間100万人しか生まれない時代にあって10万件もの相談が寄せられる状況が深刻であることにはかわりありません。

この件については。虐待増加のその他の要因も含めて、別の記事で詳しく触れていますので、関心のある方は、あわせてお読みください。

ちなみに、今回の報道発表資料のデータをもとに、都道府県別の未成年人口1000人当たりの相談対応件数を計算してみました。人口のデータは2014年、件数のデータは2015年なので多少不正確な部分もありますが、以下の図のようになります。東北、北関東、北陸、山陰、九州などで比較的低く、首都圏と関西圏、そして広島県の件数の多さが目立っています。ちなみにワーストは大阪府で1000人当たり10件を超えています。

H27(参考)未成年1000人当たり虐待相談対応件数1
(厚労省報道発表資料と、「日本の統計2016」(総務省統計局)より筆者作成)

また、虐待を受けた子供たちが脳や心に深刻な傷を負うことは広く知られていますが、実際に、それがどれほどのものなのかは、体験したことのない立場では理解しにくいことも事実です。
 
 
子供には両親の愛情が必要
 
そんな中、現在放映中のドラマ『はじめまして、愛しています。』(テレビ朝日系、木曜夜9時)では、児童虐待の深刻さの一端を知ることができます。ちょうど今夜、第四話目が放映されます。

このドラマは、虐待を受けた男の子を、自分たちの子供として育てようと、特別養子縁組の認定を目指して奮闘する夫婦の物語です。男の子は推定5歳くらい、ネグレクトの被害に遭って心を閉ざしてしまっています。この男の子の演技がとても真に迫り、非常に胸が締め付けられます。

第三話では、新しい養父母に対して、自分を本当に愛してくれるのかを試す「試し行動」が描かれました。冷蔵庫の中にあるものを片っ端から撒き散らしたり、腕に噛み付いたり…、そうした行動が長い場合は半年ほども続くといいます。その間、里親夫婦は、決してその子を叱ったりしてはならず、全てを受け入れてあげなければなりません。それほどに、幼い心に刻まれた不信感は強いのです。今日の第四話では「試し行動」が一段落した後の「赤ちゃん返り」が描かれる予定です。

「試し行動」「赤ちゃん返り」などの現象を通して、あらためて感じさせられるのは、全ての子供が、両親の愛情を心から求めているということです。そして、無条件の愛情を注がれる価値を、全ての子供が持っています。様々な「人権」が論じられる現代ですが、何よりも守られるべきは、最も弱く、最も罪のない子供たちの「両親から愛される権利」ではないでしょうか。

おりしも、タレント小倉優子さんの夫の不倫のニュースが流れました。小倉さんは第二子を妊娠中だそうです。今年に入って、妻が妊娠中の不倫がどれほど多いか、思い知らされる報道が相次いでいます。新しい命を宿す男女が、その意味と責任をしっかりと自覚できない時、最も犠牲になるのは、小さな子供たちです。

10万もの声なき声に、私たちの社会は、どのように答えていくのでしょうか。

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Posted by k. ogasawara


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