読売新聞の「子育て・介護」提言
読売新聞2月16日(朝刊)に「子育て、介護に関する提言」が掲載されました。背景には、人口減少と超高齢化への危機感があり、全くその点は共感します。「官民挙げて」の取り組みの必要性もその通りです。子育てや介護は、本来、非常にプライベートな部分が多い領域ですから、行政だけの取り組みでフォローしきれるものではありません。
一通り読んでみましたが、特に子育てに関しては「1歳~2歳児の待機児童解消がカギ」となっており、以下の4つの具体的提案がなされていました。
1.小規模保育施設を増やすため、小規模の国有地など、土地提供や情報提供を積極的に行う。
2.企業が併設する保育施設を増やすための税制優遇など支援を拡充する。
3.幼稚園の認定子ども園への移行を促進し、1-2歳の待機児童を解消する。
4.認可外保育施設の安全性確保のため、抜き打ち調査や各種情報の公開など透明性を高める。
それぞれとても重要な取り組みだと思いますが、やはり「預けやすい社会にして、子育て中の女性の労働力化を促進する」という路線の範疇を出ていません。そうなると、どうしても「1歳くらいの子供を泣く泣く施設に預けて、昼間は一生懸命に働き、お迎えに行って、疲れ果てた状態で子供の世話をする…」、こういう情景が思い浮かんでしまうのですが、ちょっと胸が苦しくなります。
安心して子育てできるコミュニティづくり
本当は、子供が2-3歳くらいまでの若い夫婦には、ある程度、経済的、体力的、精神的な余裕をもって、愛情たっぷりの家庭を築くことに集中してほしいと思うのですが、やはり難しいのでしょうか?先日、紹介した白浜アドベンチャーワールドの事例では、パンダのお母さんが、安心して子供を密着して育てられるように、たくさんの飼育員が見守りつつ環境を整えていました。
人間社会においても、大家族、親族、ご近所のあたたかい見守りやサポートの中で、若い家庭を支えてあげられると良いのですが、一旦ここまで進んだ「孤立社会」を「家族、親族共同体を中心とした共生社会」に反転させるのは、それはそれで力が必要です。
そんな中、テレビや新聞の報道 で紹介されていた「都市再生機構(UR)」と子育て支援を行う企業「アズママ」が提携して行う「多世代共助コミュニティ」形成に向けた取り組みは、なかなか興味深いものだと思います。一般的に、都会の賃貸住宅暮らしでは、周囲の人々とのコミュニティも作りにくく、子育てにおける助け合いも難しい状況があります。
この取り組みでは、賃貸住宅の入居者や周辺の人たちの専用コミュニティサイトをつくり、多世代交流イベントの開催などを通して「顔のわかる友人・知人の輪」を広げ、保育園などの送迎や託児などを頼りあえる仕組みをつくろうとしています。「アズママ」では、既に分譲マンションなどでこうした取り組みを勧めているようですが、賃貸では初めて、とのことです。
子育て、介護をめぐる困難の大部分は、頼れる家族、コミュニティの喪失から来ています。従って、本質的には、離婚を減らしたり、三世代同居を促進するなど、家族、親族の絆やつながりを強化することが大切なのは間違いありません。しかし、さしあたって孤立した家族(母子など)を救うためには、疑似家族的関係であったとしても、こうしたコミュニティづくりは必要な取り組みだと思います。
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