「婚外子」の増加は子供を不幸にする

時事問題子供, 家庭, 家族, 結婚

米国の外交専門誌『Foreign Affairs』に、珍しく結婚問題を扱った記事が掲載されました。その副題は「同棲の時代における育児」(1)です。

現在、世界的に結婚制度が相対化されつつあり、正式に結婚しないままに同棲を続け、子供を設ける割合が非常に増加しています。その風潮を受けて、日本でも「事実婚に、結婚と同様の優遇を与えて婚外子を増やしてはどうか」という議論が出てきました。

日本は、世界でも珍しいほど「婚外子の割合」が低い国なのですが、出生率が高いフランスやスウェーデンの婚外子比率が高いため、日本でも結婚しなくても子供を産めるように制度を変えるべきだと言うのです。

しかし、婚外子として生まれることは、子供にとって大きなリスクを伴います。それを各国の統計をもとに検証したのが当論文です。
 
 
同棲カップルは壊れる割合が高い

統計的にも裏付けられていることですが、子供の成長にとっては、安定した家庭環境が非常に重要です。中でも、身の回りの世話をやいてくれる養育者が変わらないことが特に重要です。生物学的に血のつながった両親に育てられることは、教育水準、精神衛生、大人になってからの収入にまで肯定的な影響を与えるとされています。

しかし、同棲カップルのもとで誕生した子供は、結婚した夫婦のもとに生まれた子供と比較して、平均で2倍ほど、家族の崩壊に直面するリスクが高まるようです。

この論文のもとになっている『World Family Map 2017 : Mapping Family Change and Child Well-Being Outcomes』(2)に掲載されたデータをもとに、グラフをつくってみました。12歳までに家族の変動(主には両親の別離)を経験する子供の割合です。

※)学歴別にデータがとられていたのですが、ここでは特に母親が高学歴の場合を抽出しました。

グラフを見れば一目瞭然ですが、同棲で子供を産んだカップルの方が、より多く別離を経験し、結果的に子供たちの成育環境を悪化させています。論文の著者も触れていますが、よく「ヨーロッパでは同棲と結婚は同等で、同棲カップルも同じくらい幸せを享受している」と言われますが、この統計は、その思い込みを否定するものです。フランスのようにシビル・ユニオンを法制化しても、正式な結婚をしないカップルの不安定性は変わりません。

更に気がかりなことは、国別にみると「同棲が急増する最初の時期」に、子供たちが家族の変動を経験するリスクが最も高くなる傾向があるのです。つまり、結婚制度を守ってきた日本で、その価値観が崩れ、婚外子が急増する場合には、それだけ、両親と離れ離れで育つ子供が増えてしまうことになるのです。
 
 
「家族の変動」のリスク

そうした幼少期における「家族の変動」が、子供たちに大きな重荷を背負わせることは様々な研究で指摘されています。この論文では次のような例が挙げられました。

「両親がそろった家庭と比べて、両親が離別した家庭で育った子供は、大学卒業の割合が7ポイント低くなる」(ヨーロッパ14カ国を対象とした研究)。

「両親が離別すると、少年少女がより多く暴力的な行動を起こし、不品行ゆえに教師から制裁を受け、薬物乱用に苦しむ割合も多くなる」(ノルウェーの研究)。

「幼少期に両親の離婚を経験すると20代と30代の前半における精神衛生にマイナスの影響がある」(英国の研究)。

「家族の不安定性は、子供たちの死亡率を少なくとも20%上昇させる」(アフリカ、アジア、南米20数か国の子供たちのサンプルを用いた研究)。

「家庭における養育者が変化した子供は、10代でより早期の性行為を経験する」(ケニア)。

 
 
また、同棲カップルの増加は、別離するカップルの増加をもたらすため、結果としてシングルマザーの増加を招いています。母親一人での子育てが、より多くの「子供の貧困」をもたらし、児童虐待や無理心中などの悲劇を引き起こしやすくなることは言うまでもありません。

この論文は次のような文章で結ばれています。

「世界中で、大人たちのライフコースを固定する『結婚』が減少するにつれて、ますます多くの子供たちが、ますます乱れ行く家族の激流に放り込まれることになるかもしれない」。

子供たちを大切に思うなら、結婚制度をしっかり守っていくべきです。大人たちが簡単に結ばれ、簡単に別れゆく社会で犠牲になるのは、子供たちです。
 
 
 
 
(1)Bradford Wilcox & Laurie DeRose. ”Ties That Bind”. Foreign Affairs. Feb 14, 2017

(2)Laurie DeRose, et al. ”World Family Map 2017 : Mapping Family Change and Child Well-Being Outcomes”. Social Trends Institute. Institute for Family Studies. 2017

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Posted by k. ogasawara


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