「里親委託率75%」厚労省の検討会が数値目標を了承

時事問題子供, 家庭, 家族, 虐待

7月31日、厚生労働省の有識者検討会は、虐待や貧困などにより親元で暮らせない子供たちの里親委託率を75%まで引き上げる目標を了承しました。2015年度末で、親元で暮らせない子供の数は36000人に達していますが、このうち里親委託率は2割弱にすぎず、8割以上が児童養護施設や乳児院で育てられています。

今回の数値目標の設定は、こうした施設入所中心の社会的養育のあり方を改め、より家庭的な環境での養育へと転換する狙いがあります。既に2016年の改正児童福祉法で「家庭と同様の環境における養育の推進」が国や自治体の責務として掲げられており、同法の理念と、施設入所が大半を占める実態との乖離が指摘されていました。

新たな方針に含まれる「未就学児の施設入所の原則停止」には、厚労省の強い意志が感じられます。現実として、子供の発育を考えれば、特に就学前の乳幼児については、安定した家庭的環境で育てられることが最善であり、こうした目標の明確化は歓迎されるべきです。

実現に向けては大きな課題

ただし、この数値目標の実現には大きな課題があることも確かです。現在、施設に入所している子供が3万人近くに上る一方で、登録里親数は約1万世帯にとどまっています。里親の必要性を理解して協力したいと考える人は相当数にのぼると思われますが、実際に、その子供たちの人生に責任をもつ「里親」として登録するには、かなり大きなハードルがあるでしょう。

厚労省は、啓蒙活動を展開するとともに、里親支援員を配置し、研修制度を充実させるなど、里親支援体制を強化するとしています。それ自体は大いに進めてほしいと思いますが、一方で、そもそも「親元で暮らせない子供たちをいかに減らしていくか」という取り組みも進めなければなりません。

児童相談所が対応する虐待相談件数は、年々増加の一途をたどっており、2015年度はついに年間10万件を超えました。「里親」による庇護を必要とする子供たちは、今後、ますます増えていくと予想されます。その半面、未婚、離婚の増加により「里親」の機能を引き受けられるような安定した夫婦、家庭の数は減っていくでしょう。

「健全」という言葉が適切かどうかはわかりませんが、正式に結婚をして、夫婦で子育てを行う「健全」な家庭の衰退こそが、こうした子供の悲劇の背後にあることを忘れてはなりません。

より深刻な「虐待入院」も

先日、NHKのクローズアップ現代で「虐待入院」の問題が取り上げられていました。虐待や育児放棄が原因で入院した子供たちのうち、親元にも戻せず、施設入所もできない子供たちが、治療後も病院で生活しているというケースが現実に存在するのです。NHKの資料では、その数は2015年~16年で、少なくとも356人にのぼるとされていました。

やはり、その番組の中でも国立成育医療研究センター部長の奥山眞紀子氏が、家庭的環境での養育の重要性を訴え、里親を増やすことが必要だと述べていました。最後に紹介された、4か月間虐待入院を経験した女性の告白は胸をしめつけます。

「入院して救われたと思っていました。しかし、そばにいてくれる人も、遊んでくれる人も、ゆっくり話を聞いてくれる人もいませんでした。本当に、本当にさびしかったです」。

子供は、両親の愛情を切実に求めています。結婚し、子供を持つことの素晴らしさと責任を、しっかりと自覚できる大人を育てなければなりません。

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Posted by k. ogasawara


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