ワーキングマザーの意識調査(米国)

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最近、シリコンバレーでヒラリー・クリントンが、自らの弁護士および母親としての経験について語ったことで、再び女性の仕事と家庭の両立の問題が注目を浴びました。その問題に関してピューリサーチセンターが取り上げています。

KIM PARKER. “Despite progress, women still bear heavier load than men in balancing work and family” Pew Research Center. MARCH 10, 2015

2013年に行われたピューの調査によると「親となったことが仕事や経歴にマイナスになっている」と答えた人の割合は、父親がわずか16%であるのに対し、母親は51%となっています。また「子供たちや家族の世話のためにかなりの労働時間を犠牲にした」と答える割合も、父親が24%に対して、母親は39%、更に、同様の事情で「仕事を辞めた割合」は、父親の10%に対して母親は27%と三倍近くに上っています。

この結果について、記事中では「職場における性差の平等をもたらしたこの数十年の進展にも関わらず女性たちは仕事と家族のバランスを取ることにおいて、より重い荷物を背負い続けている」と書いています。

ここには異なる捉え方があり得るでしょう。「男女の固定化した役割分担意識がまだまだ根強いので、更なる意識改革を進めるべきだ」と解釈するか、あるいは「これだけ意識改革が進んでも、なおかつこの状況であるなら、やはり男女にはある程度の違いがあるのだろう」と捉えるか。

その答えを示唆する文章が、この記事の末尾に添えられています。「しかしながら、母親たちは、これらのステップを取ったことを後悔していない。彼らの労働時間を減らしたり、相当の時間を労働から割いたワーキングマザーの90%以上は、彼女らがそうしたことを喜んでいると言う」。
 
 
違いを認め、互いに尊重しあうことが大切
 
最近、日本で芸能人の離婚が話題となった際に「産後クライシス」という言葉が紹介され、原因として男女の違いに対する相互理解の欠如があけられていました。実際に、夫婦のカウンセリングを行う人々の間では「男女の違いを認識することが、お互いの関係を構築する上で非常に大切だ」と指摘する人が多くいらっしゃます。

特に、子供に対する愛着や、子育てで感じる喜びは、女性の方がはるかに強く、大きいようです。

私ごとですが、先日、ある老婦人と話していると、やはり「仕事と子育て」の話になり、その婦人は自らの若い頃を回想しながら「なんでこんなにかわいい子を置いて仕事にいかなければならないのか、と泣きながら仕事に行っていたわ」と、それこそ、涙ぐみながら話してくださいました。

もちろん「子育ては女性の役目だ」と上から目線で言うつもりはありません。しかし、個人的な体験から見ても、父親と比べて、母親の子供に対する愛情は、ちょっと質の違うものがあるようです。資質としては、なおさらです。

この点に関して、津田塾大学の三砂ちずる教授(疫学)の印象深い文章がありました。

自然なお産をした女性は、痛かったけれど、素晴らしい経験をしたのでもう一人産みたい、と思う。完全母乳するお母さんは赤ちゃんと一体化して、二人以外は何もいらない、という深い喜びと感動の経験をする。
今どき受け入れ難いかもしれないが、男女は決定的に違うと思う。女性は世代をつなぎ、周りの人に愛と祈りを捧げる存在。それを世代間を超えて伝え損ねてきた。(『Enichi2015年5月号)

ふと、毎日、神棚、仏壇の前で子供たちの幸せのために祈りを捧げ続けてくれていた祖母と母の姿が思い浮かびました。

 
 
大切な喜びを奪ってはいけない
 
今、安倍政権では「女性の活用」がさかんに叫ばれています。もちろん、女性が男性と同等に社会で価値を発揮していくことには賛成です。男性論理だけに偏った社会は、どうしてもひずみが出てきます。しかし、活躍する形は、全く同じではないかもしれません。「男性ならでは」「女性ならでは」の生き方、輝き方があると考えることは、果たして「差別」なのでしょうか。

ひとつ心配なことは、「待機児童ゼロ」云々という現在の文脈の中で、ゼロ歳児、1歳児までも容易に預けられる体制をつくろうとする動きがみられることです。それは女性のための施策のように見えて、実際には、女性から「子育ての喜び」を奪う結果になるかもしれません。

ある教育者の方が語られた言葉が心に残っています。「今の保育士たちの悩みは、子供が初めてしゃべったり、歩いたりする瞬間を目撃してしまうことです。ある園長先生は、保育士に対して『ご両親には歩きましたよ、と言わないで、もうすぐ歩けるようになりそうですよ、と言いなさい』と指導しています。なぜなら、それは本当は親が体験すべき、とても大切な瞬間だからです」。

「子育てや家族のために仕事の時間を削る = 不幸、犠牲」というのも、ある種の固定観念かもしれません。「90%以上の女性がそうしたことを喜んでいる」という調査結果を読んで、そんなことを考えさせられました。

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Posted by k. ogasawara


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