既成メディアの限界を示した参院選
今回の参院選では、選挙権年齢が18歳に引き下げられたこともあり、若者の投票動向が大きな焦点の一つとなっていました。結果として、18歳の投票率は51.17%と非常に高いものとなりましたが、19歳の投票率は39.66%であり、大学進学に伴う住民票の移動の問題など改善策の必要性が指摘されています。それでもなお、1992年以降、20代の投票率は20~30%台にとどまっていたことを考えると、18、19歳を合わせて45.45%というのは非常に高い水準と言えます(参院選全体は選挙区で54.70%)
ただ、今回、投票率以上に注目すべき結果となったのは、若い世代における自民党支持率の高さです。最も差が大きい60代と20代で比較すると、60代が自民33%/民進・共産35%でほぼ拮抗しているのに対し、20代は、自民43%/民進・共産23%となり、自民が民進・共産の二倍近い票を集めています。(通常、与党の枠組みでは公明党も含みますが、ほとんど年代別の差がないため、今回は自民党と、民進・共産との比較にしています)
堀江浩編集委員. 「18・19歳の半数、比例区で自公に投票 朝日出口調査」. 朝日新聞[online]. Jul 11, 2016 よりグラフは筆者作成
メディア報道と現実のずれ
事前の報道では、反安倍政権の立場を取るSEALDsが中心的に取り上げられ、若者の政治行動の象徴とされていましたが、メディア報道と実際の投票行動との温度差が目立つ結果となっています。
もともとSEALDsのデモが始まったかなり早い時期から、報道と現実の間には少なからず乖離がありました。その期間、個人的に永田町に行く機会もありましたが、若者が先頭に立つテレビ映像の印象とは異なり、実際にデモの大多数を占めていたのは全共闘世代とおぼしき中高年の方々でした。
また、TV番組で特集された若者のディスカッションなどを見ても、SEALDsの断定的で攻撃的な主張に共感できないという意見も目立っていました。更に、そうした若者の発言に対して、年輩のコメンテーターが「もっと若者が批判精神を持たなければ国が危うい」と、あえて政権批判を煽るような発言をする場面も見られました。
既成メディアの限界
このような温度差が生まれる一つの要因は、既存メディアの番組制作に関わる人々の思想の偏りと感覚の古さかもしれません。結局、SEALDsの動きに盛り上がっていたのは、中高年層の一部、特に、60~70年代に左翼的な運動に加わっていたり、その影響下で育ったような人々だったということです。
それに対して、若者たちは、そもそも既存メディアの情報とは距離を置いており、SNSなどWebメディアを通じた情報収集が主流となっています。そうした言論空間においては、中国の脅威や安全保障について、様々な視点からの分析や議論があふれており、左寄りの既成メディアと比較して必ずしも反安倍政権一色ではありません。更には、鳩山、菅両政権を中心とした民主党(当時)与党時代へのアレルギーも強く残っており、安保法制に対する旧民主党議員の姿勢が政権担当時と矛盾していることも、しっかり指摘されています。
全共闘世代に多く見られる観念的な平和主義や、政権のやることになんでも反対する抵抗野党の在り方などは、若者たちには通じなくなっています。そのあたりの認識を深めない限り、民進、共産両党のみならず、既存メディアからの若者離れを食い止めることはできないでしょう。
最近のコメント