「子供の貧困」と男性の倫理的責任
今朝、NHKの朝のニュース番組で「子供の貧困」について扱っていました。17歳以下の貧困率は、実に6人に1人です。35人学級とすれば、1クラスで約6人が貧困状態にある計算になります。俄かには信じがたい数字ですが、これが現実です。
インスタント食品とお菓子で一日1~2食。お風呂に入れないので、学校でいじめられる…等々、胸の痛む実例がいくつか紹介されていました。日本は、まだまだ世界で有数の豊かな国のはずですが、これだけ貧困で苦しむ子供がいるというのはとても深刻な事態です。
「子供の貧困」は、言い換えれば「子供を持つ親の貧困」です。そして、その貧困に苦しむ親たちのうち、一定の割合を、未婚、あるいは離婚して一人で子どもを育てるお母さんが占めています。一般的に、配偶者や親の支援なしに女性が一人で子どもを育てようとした場合、収入が低水準になるのは避けられません。特に子供が小さなうちは尚更です。
現状で、多くの貧困がある以上、そこに対する支援は不可欠です。金銭的な支援、預けることのできる施設の拡充等、官民を問わず、きめ細かい取り組みが必要とされます。実際に、上記番組でも貧困に陥っている子供たちをサポートするいくつかのプロジェクトが紹介されていました。
対症療法のみならず予防的な対策を
しかし、それらはやはり何らかの財政的措置を必要とするので、日本経済の縮小傾向から見て、削減、縮小の可能性はあっても、これ以上の大幅な拡充は望めないでしょう。そう考えると、結果として出てきた「子供の貧困」問題に対する対応だけではなく、「子供の貧困」を生み出さないような予防的措置も緊急に考慮される必要があるのではないでしょうか。つまり未婚の母として子供を産んだり、あるいは子供がありながら離婚を選ぶ夫婦自体を減らすことです。
未婚の母、離婚家庭をなくす…というと、女性の倫理や生き方に対して注文をつけているように聞こえるかもしれませんが、逆です。子供の貧困、あるいは子供を一人で育てる母親の貧困を生み出しているのは、男性にも大きな責任があります。そもそも子供は女性ひとりでは生まれません。
「子供の貧困」の原因の一つが男性の責任感の欠如にあることの根拠として、このようなデータがあります。離婚母子家庭に対しては、基本的に元夫から養育費のサポートがあるものと考えがちですが、日本では、実際に養育費が支払われている割合は何と2割(19.7%)しかありません。これについては「支払うつもりだったが、途中で男性にその力がなくなった」というケースも考えられますが、離婚して以来一度も養育費を受け取っていない母子世帯は実に6割(60.7%)にのぼります(1)。
(1)「平成23年度全国母子世帯等調査結果報告」厚生労働省(2014年9月4日取得)
率直に言えば、6割の男性が、別れた妻と子供に対して一切の経済的責任を果たしていないということです。その中で2割は「元夫と関わりたくない」と妻の側から養育費の受け取りを放棄しているケースですが、このことも含め、結婚にふさわしい責任感と人格を持っていない男性たちの存在が浮かび上がってきます。
一方、米国などでは、未婚や別居のケースでも、父親が養育費を支払うのが一般的であるといいます。実際に6割が取り決めた養育費をきちんと支払っており、全く払っていないケースは2割にとどまります(2)。また、婚外子の比率が高いスウェーデンでは、遺伝的な父親を確定したうえで、子供が成人するまでの養育責任を負わせ、養育費の支払いを怠った場合には強制的に取り立てる制度さえあるそうです(3)。
もちろん、これは米国などの男性が、日本の男性に比べて責任感が強い、ということではありません。スウェーデンの場合は公平な税負担の観点から、米国の場合は、自己責任の観点から、強制的に取り立てるシステムを作っているというだけのことです。
(2)周燕飛. 「養育費の徴収と母子世帯の経済的自立」. 2008,2月(2014年9月4日取得)
(3)善積京子. 「スウェーデンの葬送と高齢者福祉ー変わる家族の絆ー」. (2014年9月4日取得)
性倫理、結婚倫理の教育が必要
いずれにせよ、かつて「浮気は男の甲斐性」と言っていた我が国においても、そろそろ男性の誠実さや貞操観念、責任感が問われる時代に来ているのではないでしょうか。本来「子供の貧困」に対して第一義的に責任を負うべきなのは行政でもなければ地域社会でもありません。子供の命を生み出した両親であり、特に経済的側面においては父親である、ということを強調しておきたいと思います。
性や結婚に対する教育が如何にあるべきか、ということは、様々に意見が分かれるところですが、性行為をする際に、相手の人格や人生、更には生まれてくるかもしれない命に対する責任が伴うということはしっかりと教えるべきでしょう。「純潔」や「貞操」というとほぼ死語のようになってしまったが、性倫理の重要性が色あせているとは思いません。
強制的に取り立てなければならない社会になるよりは、積極的に責任を果たす人間をつくる教育を充実させるほうが健康的だと思いますが、どうでしょう。同様に「子供の貧困」への対策だけに偏らず「子供の貧困」が生まれる根っこを断つ努力もすべきです。
もちろん深刻化する現状に対するセーフティネットは不可欠です。子供たちの未来を失わないためにも、番組で取り上げられていたような草の根の取り組みには心からの敬意を表したいと思います。
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