「マイク・ペンス氏に関する5つの信仰的事実」
いよいよ共和党の党大会が、18日(米国時間)からオハイオ州クリーブランドで開催されます。順調であれば、トランプ氏が共和党大統領候補として正式に決定する予定ですが、党内はまだまだ波乱含みであり、決定したとしても、本選に向けては不安要素の方が大きい状況です。
そんな中、副大統領候補の人選が注目を集めていましたが、結果的にトランプ氏はインディアナ州知事のマイク・ペンス氏を指名しました。ペンス氏は長く下院議員を務め、共和党主流派にも幅広い人脈を持っていることから、党内融和を最優先した人選だと言われています。では、このペンス氏とは、どのような人物なのでしょうか?
『Religion News Service』が「ペンス氏に関する5つの信仰的事実―ボーン・アゲイン、福音派のカトリック―」と題する記事を掲載しました。同サイトは、予備選期間中も各候補の信仰について同様の記事を発表していました。候補者の政策や行動の基礎となる価値観を知ると言う意味では非常に興味深いテーマです。以下に、ペンス氏の信仰について、RNSが挙げたポイントを紹介しましょう。各項目の内容については要点をまとめ、必要に応じて補足説明を加えて訳出しています。
1.彼はカトリックとして育ち、後に、福音派メガチャーチに参席した。
彼は、ケネディ家を崇めていたと言うアイルランド系のカトリックの家庭で成長し、教区立学校に通い、ミサの侍者も務めました。「キリストとの深い交わり」を築いたのは、大学で特定の教派に属さないキリスト教学生グループに参加していた時期。90年代には、家族でグレース福音教会(Grace Evangelical Church)に通っていましたが、本人によると現在は「教会を探している」立場のようです。
2.彼は、議員として福音派にとって重要な議案を支持した。
2000年から、2013年に知事として転出するまでの期間、彼は下院議員として「汚されることのない文化戦士としての評判」を持っていました。ウェブサイトによると、彼は中絶権の拡大とES細胞研究に対する連邦予算の支出に反対し、同性婚を禁ずる憲法修正と、家族計画の為の新しい連邦資金の提供のカットを主張しています。
3.彼は、難民に関してインディアナポリスのカトリック大司教区と衝突した。
昨年後半、ペンス知事が保安上の懸念から難民への州の支援を停止した際、大司教区はシリアの家族をその町に迎え入れることで知事に対抗しました。ただ、知事は、その家族に対して、食券の配布とその他の州による援助を妨害したりはしませんでした。トランプの「ムスリム入国禁止」計画に関しては「不快で憲法に反する」とツィートしています。
4.彼はイスラエルを支持する。
彼は、イスラエル国家への自らの支持は、自身のキリスト教信仰によるものだと語っており、米国はイスラエルの側に立つ、と明確に発言しています。トランプ氏は、ユダヤ人有権者との関係に苦慮しており、ペンス氏の起用は、その弱点を補うものだと言われています。
5.彼は、インディアナ州で論争の的となった「宗教の自由回復法」に署名した。
これに関しては、多少、説明が必要でしょう。昨年、インディアナ州はLGBTの人権をめぐる騒動に巻き込まれました。キリスト教信仰に基づき同性愛者の結婚式にサービスを提供することを断った事業者(ケーキ店主、写真家など)への有罪判決が相次ぐ中で、インディアナ州は「宗教の自由回復法」を可決し、ペンス知事も一旦これに署名しました。
しかし、信仰に基づく行動を理由に、個人が訴追されないことを目的としたこの法案は、LGBTの権利擁護派からの猛攻撃を受けることとなります。企業によるインディアナでの事業計画のボイコットや、他州による公務員のインディアナ出張禁止など、全米規模での圧力が強まる中、その法案は修正を余儀なくされ、ペンスも結果的にその修正案に再署名しました。ただし、そこに至るまでの過程において、彼は福音派や保守派のお気に入り(darling)となり、予備選中の共和党大統領候補たちからの支持を集めました。
これらの経歴は、十分に共和党の強固な支持基盤である福音派にも訴えるものでしょう。一方で、トランプ氏のムスリム入国禁止発言には明確に反対するなど、バランス感覚も持ち合わせています。下院議員、そして州知事としての16年間にわたる豊富な実務経験があることも、トランプ氏の政治経験の無さを補う強みといえます。
彼が副大統領になることで、トランプ氏に嫌悪感を示す人々を納得させられるかどうかは分かりませんが、限りなくベストに近い選択であることは間違いないでしょう。18日から始まる党大会で、どの程度、共和党の結束が固まるのか、興味深いところです。
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